序章 2、儚き幻想〜幻想〜(後編)
「へ〜・・・確かにお祭りだ〜・・・。」
私の隣で周囲を楽しそうにキョロキョロと見回す白君様、
こんな楽しそうな表情を見るのは初めてで、私はずっと心臓が高鳴っていた。
思えば屋敷内での白君様しか見たことないんだ、あの屋敷でそんなに楽しい事があるとは思えない。
そう考えると、見たこと無いのは当然だろうか。
やっぱりこの計画を企ててよかったと思う。
「いらっしゃい!!いらっしゃい!!上質な米が安売りだよ〜!!」
「明日の為に、酒をたっぷり勝っていきなあ!!」
「これが『くりすますつりー』でい!!一家に一つ、いかがだい!?」
周囲の店の熱気は凄まじく、
「は〜い、それそれ踊れや踊れ〜!!ふんどしの〜♪」
通りの真ん中で踊ってる人たちの熱気も負けてはいない。
本当にお祭り騒ぎだけど・・・これは風湖おばさんから聞いた話とは何か違うような・・。
恐らく初めてのクリスマスを迎えるわけだから、勘違いをしているのだろう。
それとも初めてのクリスマス・イブを目前にして、とりあえず今日はお祭り、って感じともとれる。
ともかく今日は大人なムードを感じさせる日ではなく、
お祭りな日であるのは間違いない。
明日になったらやはり雰囲気は一転して、恋人達が寄り添ってるようなムードになるのだろうか。
今日の私とは違って、黒弧様は・・・
ダメ!!黒弧様の事は今は考えてはいけない!!
それにもう私は後戻りできない、今は自分の事だけを考えればいいんだ!!
「戎!!あれ、おいしそうだよ!!」
そんな中、白君様は完全に目的を忘れ、おいしいもの探しに熱中していた。
熱中している興奮なのか、白君様は私の手を握り、彼の望みの店へと引っ張っていった。
「あ・・・・。」
手を握られた私は思わず声をだす。
心臓の鼓動はどんどん早くなり、今にも自分が自分でなくなってしまいそうな感覚に陥っていた。
でも白君様は気づかない。目の前にあるお餅を見て目を輝かせているだけ。
そんな白君様ももちろん愛しいのだけれど。
「焼きもちは二つでいいかい?」
「はい、お願いします♪」
そしてパパッと私の分までお餅を買う彼。
父親が莫大なお金を動かす人だ、お小遣いもとても多い。
餅二つなんて微々たる消費にすぎないのだろう。
別に白君様を責めてるわけではないけど・・・
ただ碧君様が多額のお小遣いをあげている事に関しては私はいい事だとは思えない。
それに碧君様・・最近悪い噂が流れているみたいで・・
「はい!これ、戎のお餅ね!」
考え事をしていた私がハッと現実世界に意識が戻ると、
白君様がにこやかな微笑みを浮かべて、私にお餅を一つ差出した。
私は頷いてそれを手に取り、そして二人して、街角の茶屋のイスに座ってお餅を食べていた。
「うむむむ・・このお餅はタレが美味いなあ・・。」
おいしそうにお餅を食べる白君様。
彼のそんな姿を見てると先ほどの考え事などどうでも良くなってきた。
碧君様が本当に悪い人とも限らないし、それに白君様は白君様だ。
天然な性格で、食べ物の事ばっか考えてるおちゃらけた人、それが白君様だ。
碧君様とは違う未来を進むと私は思っていた。・・いや、そう願っていた。
考えをいろいろ整理し、私も彼の隣でお餅を食べる。
このモチモチとした独特な触感、彼も同じ触感を味わっている・・。
愛しい・・本当に愛しい・・・。
私の中の欲望は卑劣だった。
彼の肩にそっと身を傾ける。
「白君様、黒弧様にに肩を寄せられても決して慌ててはいけないですからね・・。」
彼が驚いて言葉を発する前に、念を押した。
これは黒弧様、彼女との明日のための予行演習だと。
白君様がとても照れているのが分かる。顔を見なくても、私の中の何かがそう告げている。
この感覚、まるで本当の恋人のようだ。
そうか、今私は一日限りの恋人も同然なんだ。
予行演習だといえばなんでもまかり通る。
今、白君様は私のものなんだ!!
いつのまにか辺りは暗くなっていて、
私たちは夜の道を歩いていた、身を寄せ合って。
「白君様・・照れてます・・?」
「あ、いや・・ちょっとは照れてるけど・・・あんまり緊張しなくなったような・・そうでないような・・。」
彼は予行演習だと信じて私の言うとおりにする。
恋愛に疎い彼は本当に扱いやすかった。
さっきはずっと手を握って歩いてくれたし、
お餅を食べていた際に私はわざとお餅の一部分をほっぺたにつけといて、
「黒弧様にご飯粒やお餅等、が付いていたら・・・指ですくって食べちゃって下さい。きっと顔赤くしますよ、黒子様。」
などと奇怪な要求をしても、彼は私の言うとおりに動いた。
本当に単純、本当にバカだ。
でも、だからこそ優しい人なのかもしれない。
二人きりの帰り道を満喫しつつ、物思いにふける。
今は人通りも少ない道、とても恋人のようなムードが漂い・・
「あ!あ、あれは何だろうか!?」
でも、突然白君様は大声を出し、ムードは壊れる。
「ど、どうしましたか・・あっ!!」
私もつい叫んでしまった。
白君様の指差す方角には・・巨大な木にピカピカと光るたくさんの明かりがつけられていた。
これは確か・・・
「イルミネーション・・・。」
「い、いるみねいしょん!?」
白君様の裏声な発言につい笑いながらも、その幻想的な明かり達を私は白君様と見ていた。
「外の世界にある電気というものを使った人工的な明かりですよ。って言っても白君様にはよく分からないでしょうけど・・・まあキレイな見物って事で。」
「むむむ・・・確かによくわかんないなあ・・・でもキレイだからいいか!!」
電気、私たちにとってはあまりにも未知なもの。
噂によると、将軍家の城のエセ江戸城の地下に巨大な、電気をつくる為の発電所と呼ばれるものを作ったらしい。
でもそんな事はどうでもいい。
白君様と幻想的な世界を味わう。
私にはそれで充分だった。
白君様は黒弧様ではなく、私と最初にこの世界を味わった。
そう考えるだけでも胸の中が満たされていった。
でも・・・間違えたとしたら、一体何処で間違えたのだろう?
・・・最初から・・・・・?
誰かに
見られてたような・・・?
続く。
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