〜第三話〜 静かなる戦士の来訪
「どういうこと!?お兄様は本当に過去へ行ったとでもいいますの!?」
甲高い声がある屋敷の中全体を響き渡り、数秒後、大きな音が響く。
窓ガラスが割られた音・・・
いや、正しくは窓をなにかが突き破った音であった。
屋敷の中から吹き飛ばされた屋敷の使用人は、はるか彼方へと吹っ飛ぶ。
そう、完全に屋敷からは見えなくなるほどに・・・・・。
そしてその元凶である黄色いマッチョである彼女は椅子に勢いよく座る。
「所詮は旧型、考える事も下種ってわけですわね・・・。
ですが、下手に過去で動かれるのも困りますね・・。」
「怒羅美様、例の武道家をなんとか呼び出しに成功しました!」
一人ブツブツ言っていた彼女、怒羅美の元に、
先程とは違う使用人がある件についての報告にきた。
「・・・・まあいいですわ、私自身が過去に行かなくてもすむのなら、
その武道家を利用しない手はありませんわ・・。
旧型は滅び、その地位と財産は私の物と・・・・・。」
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ノビタは正直困っていた。
意味も分からないうちに、なんか自分が怒羅衛門の依頼人と化しているうえに、
そもそもこのマッチョはノビタの家に住む気だろう。
そんな事普通に考えて可能なはずがない。
親はこの事を知ったら、間違いなく反対するだろうし、
近所でこんなのが歩いてたらもう騒ぎとかいうレベルではすまされない。
警察もでてきそうな勢いだ。
ノビタを苦しめる元凶は、そんなノビタの苦悩など知る由もなく、
先ほどの筒のようなものを磨いている。
マッチョな外見のくせにマメな行動をしているアンバランスさが気持ち悪い。
だがノビタはその謎の筒がなんなのか気になりだした。
これが未来の道具とやらなのだろうか、
そう思うとワクワクした感情が湧かなくもない。
「ねえ怒羅衛門、その筒・・・・・」
「空気砲!!!!!」
「ぶほえっ!!!!!!!!!!!!!!」
質問しようとしたが、なぜか吹き飛ばされてしまう。
怒羅衛門は倒れるノビタを上から見下ろす。
その姿は本当に気迫という名の鎧をつけてるも同然だった。
「これは空気砲だ、今のテメエみたいに吹き飛ばす事が出来る。
銃と違って弾もいらねえうえに負担もかからん。」
怒羅衛門はそうノビタに言うと、再び綺麗に筒・・空気砲を布で磨き始める。
光沢が出るまでに磨くと、怒羅衛門はそれをうっとりとしながら見る。
ノビタは、空気砲について教えてくれた事はいいのだが、
何ゆえ自分に実践する必要があったのか謎に思いつつ、
怒羅衛門の奇妙な光景にうげ〜とする。
見られたら空気砲だろうが・・・。
「空気砲!!!なにキモイ目でみてやがる!!!」
「GYAーーーー!!おまえにキモイ言われたくないわーーーーーー!!!」
「みつけましたよ、怒羅衛門。戦いなさい。」
静かな物言いが聞こえてきたのは、そんな騒動の最中だった。
再び怒羅衛門に押入れに叩きつけられたノビタは、
前方を見たとき、声の主を見る事になる・・・・
「って、ぎゃあああああああ!!!また、変なのがAAAAAAAA!!!!」
そう、相手は怒羅衛門と似ていて、体全身がオレンジ色なのである。
中華っぽい服を着ており、耳と尻尾があるのが怒羅衛門との大きな違いか・・・。
こころなしか、少しばかり怒羅衛門より背が小さいか。
ともかくバケモノである事には変わりない。
不気味としか言いようがないその垂れた目にノビタは背筋がゾッとする。
「ま、また未来から来たとか言う話・・・・?」
そうノビタが言った直後だった。
「黙りなさい、アチョッ。」
バキィィッ
中華服の生命体の手から放たれたヌンチャクがノビタの頬を強打した。
強打された本人は声にもならない叫びで床でジタバタと呻く。
しかも、中華服の生命体はもうノビタに目を向けすらしない。
そこからは冷酷な印象しか与えられない・・・。
「テメエは・・・確か俺と同業の格闘家だったな・・・。名は忘れたがな。」
怒羅衛門は目の前の存在が放つ冷たい殺気に満足しながら、
呻いているノビタを踏みつけて黙らせる。
相手は表情一つ変えずに不気味な垂れ目で怒羅衛門を見据える。
「人の名前は覚えなさい・・・・、王怒羅です、そして死になさい、アチョッ。」
ハタから見れば不意打ちにしか見えないが、
言い終わったと共に王怒羅と名乗る生命体はヌンチャクを放つ。
「ケッ、どう来るかと思えばタダの不意打ちか!!」
どうやら怒羅衛門にも不意打ちにしか見えなかったのだろう。
その点はさておき、彼はとんできたヌンチャクをムキムキな手で薙ぎ払った。
その怪力はすさまじく、ヌンチャク自身遥か彼方へ吹き飛ばす。
もちろんその前に、
ガsya−ン
とノビタの部屋の音が割れる音つきで。
「割れたYOOOOOOOOOOOOOOO!!!!
怒羅衛門なにしてくれるのさ!!!」
だいだひ〇るもビックリなラップぷりですぐに怒羅衛門を咎めるノビタ。
怒羅衛門は全く反省しているそぶりは見せなかったが、
なにやら感心している顔。
「やはり復活も速いか・・テメエのおもしろさに免じて・・
どこでもLIVEドア!!!」
彼が叫ぶと同時にポケットから取り出したのは一つの株券。
それはすぐにドアへと変貌し、
ドアが開くと同時にノビタ達はその中へ吸い込まれる。
「うわわ!!すごい!!!じゃなくて僕も連れテクノーーーーーー〜〜〜〜〜!?」
テクノミュージックだけが部屋に取り残された、嘘です。
ノビタが気が付くと周囲は見知らぬ場所へと変わっていた。
新型人工芝が下には引かれ、広さは約216メートル四方で、
周囲には観客席のようなものが・・・・
「ってここどっかで見た事あるんですけど・・・・・。」
そんなノビタのツッコミも空しく、戦いは繰り広げられていた。
もう主人公置いてけぼりにもほどがあるものだ。
「というかさあ・・・いつからバトルものになったんだーーーーーー!!!!」
「死になさい、アチョッ。」
相手の静かなる打撃攻撃を、怒羅衛門は軽々と避け続けた。
だが避ける事が容易い反面、逆に攻撃に転じれなかった。
隙がないのだ。
相手の拳、蹴りの連続さは並ではなく決して途切れない。
しかも、全く衰える気配すらない。
一つ一つの攻撃は軽いのだが、一度でも食らったらやられるまで永遠に続くだろう。
静かなる格闘家・・・怒羅衛門は自分の時代にそう呼ばれる同業者がいるとの話を
ふと思い出す。
まさに彼の事だろう。
このまま勝負は消耗戦にはいるのか、いや、そうではない。
怒羅衛門は移動する前にさりげなくつけておいた空気砲に力を蓄えていた。
相手は自分はただ攻撃を避けてるだけとしか思っていないだろう、
そう彼は確信していた。
実際は避けながら力を溜めて、相打ち覚悟で強力な空気砲を放つ、そう考えていた。
一向に進展しない戦いに嫌気がさしてきたのは王怒羅のほうだった。
「当たりなさい・・・・アチョッ。」
王怒羅は自分が相手に蹴り攻撃を放っている最中に、
袖からバナナの皮を取り出して怒羅衛門の足へと滑らせたのだ。
『うわっ!!!汚ねえやり方!!!』
このとき、傍観者なノビタと、戦ってる張本人な怒羅衛門は声をついそろえる。
その卑劣なバナナ攻撃は見事怒羅衛門を派手にずっこけさせる。
「汚いことなどしていません、帰りなさい・・・。」
王怒羅は表情をなお変えずに、ずっこけた怒羅衛門を見下ろす。
なにが「帰りなさい」なのかはどうでもいいとして、
彼が静かに物を言っていると、本当に卑怯な事をしてないようにも見える
(だいたい卑怯な事する奴は「戦いに卑怯もクソもねえよ」とか言う)。
そしてとても大きな隙を作った怒羅衛門に王怒羅はトドメさすき満々だ!
「消えなさい、アチョーーーーッ!!!」
卑怯なことしといて、そういう時に限ってトドメらしく大声をだす。
ノビタは敵がもう理解不能な変人である事を悟り、
怒羅衛門の行く末を見守っていた。
「なんかもうどうでもいいんだよねえ・・・・・。」
ノビタがタメ息をつき、王怒羅が怒羅衛門にトドメをさそうとした、その時だった。
「はああああああ!!!!空ウウウウウウウ・・気砲!!!!!!」
ズガガガガガガガガガガッ!!!!!!!!
「パーフェクトスリムー!!!!!!!!!!!!」
どっかで聞いた事ある商品名叫びながら王怒羅は吹っ飛ばされ、
その一応謎の建物を突き破り、お空へと還る。
「・・・・・この建物って・・・壊して・・・・。」
ノビタの半分放心状態な状況をほっといて、
戦いを終えた怒羅衛門は再び株券を出してドアを発生させ、
ノビタの首元をつかんでノビタの部屋へと帰る。
後にこの建物の屋根が何者かに壊された事が報道されるのはいうまでもない。
「どうすんのさ!!!あんな事したらドラゴ〇ズが困るじゃないか!!」
「ドラ〇ンズ?旨そうな名だ、とっとと献上しろ。」
「テメエはああ!!!」
言葉遣いをだいぶ荒げたノビタはもちろん怒羅衛門と口論となる。
といっても一方的にノビタが怒ってるだけだが。
「ともかく出てってよね!!おまえみたいなのが家にいたらとんでもないよ!!
外であっても他人面!!というか帰れ!!星に帰れ!!」
ノビタの罵倒の嵐にも全く応えない怒羅衛門、
ノビタのおやつのドラ焼きをしまいには勝手に食べている。
彼の態度にノビタの顔は真っ赤に染まり、噴火!!はしなかった。
だがノビタは怒羅衛門がなんと言おうと追い出す気100%だった。
今、追い出さん。
「人のおやつまでえええええええええええ・・・・・魂の欠片ものこさ・・」
「まあ、待て。空気砲一つあげるから許せ。」
「喜んで♪」
物につられました。追い出す気0%。
ノビタのような人間は道具に弱い、怒羅衛門はさりげなく学習した。
だが、そんな平穏な状況なのもつかの間、
「ノビちゃん!!!一人何騒いでるのよおおおおおおおおお!!!!!」
とてつもない金切り声が家全体に響きわたったかと思うと、
勢いよくなにかが階段を登ってきていた。
この近所迷惑な金切り声をあげる存在をノビタは知っていた。
「まずい!!ママだ!!!」
ノビタの母親、タマコは異常なほどヒステリックな女性である。
そんな彼女がこの部屋で怒羅衛門を見たらなんと言うか、いや、叫ぶか。
「ど、怒羅衛門、隠れて・・・」
静かな声で怒羅衛門に事を伝えようとするも、
怒羅衛門の顔は少し笑っていた。
ノビタは、まさか、と思うも既に遅いも同じ。
「この声の中にとんでもねえ殺気を感じる・・・・
やはり過去はおもしろそうじゃねえか・・・。」
続く。
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